ユキの果て
駆け出したあたしの白いマフラーが、流れ星の足跡みたいに揺れる。
人の波を抜けて、冷たい扉を開けた。
駆け下りる途中、階段の1番下の隅に身を潜めるヒカリを見つけた。
「ヒカリー!」
そして、あたしはバレンタインのプレゼント。
ヒカリと約束していたスノーボールを目が合った彼の顔面に────
投げつけた。
「ぶっ、」
「好きだよ!」
状況を理解できていないヒカリに畳みかけるように、そう告げた。
「は?」
ぼとり。
クッキーの袋が落ちる。
このクッキーは多分もう粉々だと思う。
「誰よりも、ヒカリが好きだよ!」
そこらの女子になんて負けない。
ユキのことより想っている。
死ぬほど恥ずかしい。
一方的で、上手く伝えられない。
頭の中で考えてなんていられない。
あたしにそんな恋を思い出させてくれたのは、あなただよ。
あたしをまじまじと見つめていた、赤い顔のヒカリが泣きそうに笑う。
両手があたしに向かって広げられた。
「俺の方が好きだ」
階段のフェンスを乗り越えて、ジャンプ。
その胸に飛びこんだ。