ユキの果て
「ユキ?」
「ううん、違うよ。
ヒカリも〝ユキ〟なんでしょ?」
あたしが嬉しそうに笑うと、ヒカリは複雑そうな表情を浮かべた。
「すみません、これ1本下さい」
「え、なになに。どうしたの?」
店員さんに頼むヒカリの袖を引く。
「お前、スノードロップの別名知ってる?」
「〝待雪草〟とかだよね」
「それだけじゃない」
1輪だけの花を渡される。
「〝春告草〟だよ。
────きっと、すぐに春が来るな」
ふんわりと胸の奥に優しいものが広がるのを感じた。
ユキとの恋の果てに見つけたものは〝ユキ〟と、それを溶かす〝春〟でもある大好きな彼。
心に跡を残す傷もあるけど、「それごと俺たちだ」と、優しく笑ってくれるから。
あなたは〝春の使者〟。
これからずっと、ずっと。
あたしだけの〝希望(ヒカリ)〟。
fin.