ユキの果て
電車に乗りこめば、手を引くヒカリに「さっさとしろ」と雑に座らされる。
いつものこととはいえ、ヒカリは空いた席を見つけると、素早くあたしを押しこんでくれる。
見つけた本人が座らないから、なんだか悪い気もするけど、なにを言ったってヒカリは座ろうとはしない。
だからいつも甘えさせてもらっているんだ。
目の前に立った彼は、あたしより3駅前で降りる。
それまでいつも、つり革に掴まりつつ目をつむっているから、会話はない。
ガタンガタン──。
電車の揺れる音に釣られるように、あたしもゆっくり目を閉じる。
もしも、人に色があるなら。
今、あたしは────何色なんだろう。
ユキ色?
雪色?
白色?
わからない。
わからないんだ。
少なくともユキ色ではないと思っていた。
なのに、今のあたしはユキの声に、笑顔に、存在に。
自分の全てを囚われている。
膝の上のスクールバッグをぎゅうぎゅうと押さえつける。
あたしだけじゃ、何色にもなれない。
だから、誰かが決めてくれたらいいのに、と他人任せな考えに乾いたため息が零れた。