ユキの果て
「ね、いつも思うんだけど『さっくり混ぜる』ってなんなの?」
「さっくりはさっくりだけど。
……え、やだやだ怖い。
結晶は混ぜるの止めよう⁈」
不安そうな委員長に見守られる中、ゴムベラを手に取る。
よし、何事もチャレンジ!
「貸せ」
さぁ、混ぜるぞ! という時になって、あたしの手からヘラを取り上げたのは、
「あれ、ヒカリ?」
「俺がする」
お前がしたら食えなくなる、ってひどい。
むすっとしても、気にも止めずヒカリは生地を混ぜ始めて……。
その手つきは手慣れていて、普通に上手かった。
無駄なく混ざっていき、あっという間に型に流しこまれた。
「なんでヒカリがこんなに上手なの!」
委員長に言われた皿洗いも終えて、あとは焼きあがる頃にメープルミルクを仕込むだけ。
ようやく落ち着くことができて、あたしはヒカリに文句を言うことができたの。
「お前が下手なだけだろ」
う、なにも言い返せない。