銀狼の涙
*01・幼き日の出逢い*
その日―幼い王女・ヴィアラは母王妃と共に隣国を訪れていた。

だが隣国・シューベリス国との国境にまたがる『漆黒の森』で―母の一行とはぐれてしまった。

「グスッ・・・お母様ぁ・・・。」

(もう暗くなってしまうわ・・・早くお母様のところへ行かないと・・・。)

だが元いた場所に戻ろうとすればするほど―深く森の奥へ入ってしまう。

「グルル・・・。」

―・・・獣の唸り声が聞こえる。

「なに・・・!?出てきてっ・・・。」

出てきたのは、銀色の毛をした狼―銀狼(ぎんろう)だった。

「いやっ・・・来ないで・・・!!」

『迷子なのだろう・・・?』

確かに、銀狼がそう言った。

「ええ・・・でも・・・。」

『私の背に乗れ。』

「え・・・?」

『いいから乗れ。』

「わ・・・分かったわ。」

彼女はドレスを摘まみ上げ、横向きに乗った。

「どこに連れて行くつもりなの・・・?」

彼はくんくんと土についている匂いを嗅いだ。

『こっちだな・・・。』

『娘、しっかり掴まれ!!』

「え・・きゃっ・・・。」

銀楼は走り出した。

そして、近衛騎士団と王妃を見つけた。

『降りろ・・・。』

「ありがとう。わたしはヴィアラ・・・あなたは・・・?」

『―ロランだ。』

「またいつか逢いましょう・・・ロランさま・・・。」

彼女は微笑んだ。

可憐な―美しい微笑みだった。

「まあ・・・ヴィアラ・・・!!心配したのよ・・・!!」

「ごめんなさい、お母様。」

「王妃さま、姫様・・・早く馬車に・・・。」

「行きましょう、ヴィアラ。」

「はい、お母様。」

二人は馬車に乗り込み、『漆黒の森』を後にした。
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