水平線の彼方に(下)
Act.6 約束
その日の夜、私は一人で部屋にいた…。
彼女はお兄ちゃんと出かけて行ったきりまだ戻ってなかった…。
朝のビーチからの帰り、私達は三人とも無口だった。
運転するお兄ちゃんの隣で、彼女はずっと海を眺めていた…。
姉の魂が眠る場所…。
その底を睨むような、厳しい眼差しをしていた…。
テル伯母さんは帰って来た私達の顔を見るなり一瞬黙った。
何かがあったんだという事を、直感で悟ったんだと思う。
お兄ちゃんを呼び、コソコソと話を聞いている。その顔が渋かった。
「花穂、ちょっと出かけよう」
夕飯の後、誘ったのはお兄ちゃんの方からだった。
行きたくなさそうな顔をする彼女に、伯母さんからも勧めがあった。
「行っといでよ!夜の沖縄も楽しいよ!」
お酒は苦手なんです…と話す彼女に酒場以外でも楽しい場所はあると伝え追い立てる。
仕方なく立ち上がった彼女は、渋々お兄ちゃんについて行った…。
「キラ、ちょっといいかい?入るよ」
伯母さんの声がして襖が開いた。
トレイの上に熟したマンゴーが乗っている。
モグモグとそれを口に入れる私を眺めるようにして伯母さんが聞いてきた。
「あんた、今朝一体何をしたんだい?」
考えたくなかった事を聞かれ、気持ちが沈んだ。
「真ちゃんは花穂ちゃんと軽いケンカをしたと言ってたけど、私は違うと見たね。…あんた、何か余計な事したんだろ」
濡れた服のまま帰ったから、海に入ったことはバレてる。その上で、他に何をしたのかと聞かれてるんだ。
「…お兄ちゃんに…事故の前、何があったのか聞いた…」
ずっと心の内に秘めていた疑問をぶつけた。
それで皆が嫌な思いをすると考えもしないで…。
「なんでそんなバカなこと聞いたんだい。子供が知らなくてもいい事なのに…」
「子供じゃないもん!」
反発しかけて、口を閉ざした。
「…と思ってたから…」
どう考えても子供っぽい行動にしかなってない。それを素直に認めた。
「仕方ない子だね…」
呆れるように息をつかれる。今の私には、小言よりもその溜め息の方が重かった。
落ち込み、肩を落とす私に向かい、伯母さんは話し始めた。
「キラ…よくお聞き。萌が死んだのは真ちゃんのせいじゃないんだよ…」
重々分かってるつもりでコクン…と頷いた。
「…萌本人の責任でもないんだ…」
それも勿論そうだと思って頷いた。
「だから…真ちゃんが花穂さんを選んだことを恨んじゃいけない…」
じわっ…と涙が目に溜まった。
「萌は死んだけど、真ちゃんは生きてるんだから…」
ポロリ…と粒が零れた。
「そ…そんなの…分かってるよ…」
いくら自分が子供だからと言っても、それくらい承知してる。
だから今、こうして反省してるんだ…。
「おばちゃんのバカ…そんなの言われなくても分かってるよ…」
失恋に追い打ちをかけられたように、涙が溢れた。
お兄ちゃんには、どんな私も視界に入らないんだと、完全に思い知った…。
彼女はお兄ちゃんと出かけて行ったきりまだ戻ってなかった…。
朝のビーチからの帰り、私達は三人とも無口だった。
運転するお兄ちゃんの隣で、彼女はずっと海を眺めていた…。
姉の魂が眠る場所…。
その底を睨むような、厳しい眼差しをしていた…。
テル伯母さんは帰って来た私達の顔を見るなり一瞬黙った。
何かがあったんだという事を、直感で悟ったんだと思う。
お兄ちゃんを呼び、コソコソと話を聞いている。その顔が渋かった。
「花穂、ちょっと出かけよう」
夕飯の後、誘ったのはお兄ちゃんの方からだった。
行きたくなさそうな顔をする彼女に、伯母さんからも勧めがあった。
「行っといでよ!夜の沖縄も楽しいよ!」
お酒は苦手なんです…と話す彼女に酒場以外でも楽しい場所はあると伝え追い立てる。
仕方なく立ち上がった彼女は、渋々お兄ちゃんについて行った…。
「キラ、ちょっといいかい?入るよ」
伯母さんの声がして襖が開いた。
トレイの上に熟したマンゴーが乗っている。
モグモグとそれを口に入れる私を眺めるようにして伯母さんが聞いてきた。
「あんた、今朝一体何をしたんだい?」
考えたくなかった事を聞かれ、気持ちが沈んだ。
「真ちゃんは花穂ちゃんと軽いケンカをしたと言ってたけど、私は違うと見たね。…あんた、何か余計な事したんだろ」
濡れた服のまま帰ったから、海に入ったことはバレてる。その上で、他に何をしたのかと聞かれてるんだ。
「…お兄ちゃんに…事故の前、何があったのか聞いた…」
ずっと心の内に秘めていた疑問をぶつけた。
それで皆が嫌な思いをすると考えもしないで…。
「なんでそんなバカなこと聞いたんだい。子供が知らなくてもいい事なのに…」
「子供じゃないもん!」
反発しかけて、口を閉ざした。
「…と思ってたから…」
どう考えても子供っぽい行動にしかなってない。それを素直に認めた。
「仕方ない子だね…」
呆れるように息をつかれる。今の私には、小言よりもその溜め息の方が重かった。
落ち込み、肩を落とす私に向かい、伯母さんは話し始めた。
「キラ…よくお聞き。萌が死んだのは真ちゃんのせいじゃないんだよ…」
重々分かってるつもりでコクン…と頷いた。
「…萌本人の責任でもないんだ…」
それも勿論そうだと思って頷いた。
「だから…真ちゃんが花穂さんを選んだことを恨んじゃいけない…」
じわっ…と涙が目に溜まった。
「萌は死んだけど、真ちゃんは生きてるんだから…」
ポロリ…と粒が零れた。
「そ…そんなの…分かってるよ…」
いくら自分が子供だからと言っても、それくらい承知してる。
だから今、こうして反省してるんだ…。
「おばちゃんのバカ…そんなの言われなくても分かってるよ…」
失恋に追い打ちをかけられたように、涙が溢れた。
お兄ちゃんには、どんな私も視界に入らないんだと、完全に思い知った…。