水平線の彼方に(下)
ジョーリの名前は漢字で書くと『城里 航(じょうり わたる)』
高校のクラスメートで友人で遊び仲間……だったんだけど…

「ひ、久しぶりだな…」

(顔赤くして言うくらいなら、声かけてこないでよ…)

「そ…そうね…」

つられた。一緒になって赤面して、バカップルみたいじゃん、まるで。

「何してんだよ、こんなとこで」
「何してんのよ、そっちこそ」

投げ合う様な会話の仕方。一学期まではそれが私達のスタイルだったんだけど…。

「俺は部活の帰りに寄っただけだよ」
「わ…私はバイトから帰って来たばっかで…」

どうにも話しにくいこの雰囲気。作ったのはジョーリ本人なんだけど…。

「ああ…そー言えばバイトするって流してたっけ…」

平気そうに振る舞う。無理してそんな態度、取らなくてもいいのに。

心臓バクバクしてるの、絶対私だけじゃないハズ。
だって、告ってきたのあっちだもん…。



「…好きだ」

一学期の最終日。いきなり告られた。誰もいない教室で二人きりの放課後。

「へっ…⁈ 」

(ジョーダン?何言ってんの⁈ )

言葉を呑み込んだワケは、ジョーリが真剣な顔してたから。

「…ごめん。無理。諦めて」

頭の中で、お兄ちゃんの顔が浮かんだ。

「私、好きな人いるの。片思いだけど…」

実るかどうかもハッキリしない。第一、いつ会えるかも分からない相手…だけど…

「ジョーリとは友達でいたい。悪いけど…ホント、ごめん…!」

ドキドキしながら手を握りしめて頭を下げた。
ジョーリの顔、怒ってる様にしか見えない。

(…まずい。もう少し言い方があったかも…)

「……そうかよ…」

「…えっ」

「告って悪かったよ。忘れていいから」

「…えっ⁈ …えっ⁈ …あっ…!」

走って逃げてく。そのスピードの速いこと速いこと…。

ポカン……

教室に一人取り残された。こんな形でひとりきりにされるなんて、なんだか切ない。

「…帰るか」

あっけに取られながらバッグを手にした。
明日から夏休み。伯母さんに呼ばれなかったら仲間達と何して遊ぼうか、あれこれ考えてたけど…。

(困る…ジョーリがいる時、皆と遊びにくい…)

気の重い夏休みの始まり。
そこへ暑さも絡まって、余計にイライラが増したーーー。
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