水平線の彼方に(下)
テル伯母さんの家は、自宅からバスを乗り継いで一時間。市外の丘陵地の外れにある。
自分の家より山裾に近い所にあるおかげで、朝・晩は比較的涼しい。
庭に大きなガジュマルの木もあって、ちょうどいい影を作ってる…。

「おばちゃん家サイコー‼︎ 気持ちいいー‼︎ 」

家に着くなり床に寝転ぶ私を見て、テル伯母さんは呆れて笑った。

「年頃の娘がとる行動とは思えないね…」

カラカラと氷の入ったグラスを持って来て座る。
その音に飛び起きて、ジュースを一気に飲み干した。

「う〜ん、美味しいっ‼︎ やっぱおばちゃんの作るシークワーサージュースは、どこのよりも一番美味しくて大好きっ‼︎ 」

お世辞でもなく本気で言うと、ニコニコしながらお礼を言われた。

「ありがとさん」

日焼けした顔はママに似てる。でも、性格は正反対だ。

「キラ、昼から仕事始めるよ。しっかり日焼け止め塗っときなね」

外の照りつける太陽を思って言ってくれる。ちゃっかり者の伯母さんには逆らえない。

「は〜い…」

仕方なく返事。これもバイト代の為だ。

仕事が始まるまでの間、寝泊まりする二階の部屋を準備する。
窓から見えるガジュマルの木には葉が生い茂り、そのおかげで、どこの部屋よりも涼しかった。

「いい気持ち…」

照りつける太陽光線もここまでは届かない。つくづく来て良かったと実感してた。

バッグから写真を取り出し棚に飾る。そのスマイルに合わせてニッコリ。
姉に向けてではない。隣に写ってる人に対してだ。

「今年も会えるといいなぁ…」

去年のような偶然が、今年もまたあったらいいのに。
荷物を出しながら思ってしまう。
簡単には会えない人なのに、何故、想いを寄せてしまったのか…。

(お姉ちゃんのせい…?)

鏡に映る自分を見て思った。
一学期までとは別の人格が映し出されてる。
なんとも言えない妙な感覚に、本来の自分が打ち消されてる気がした…。
< 3 / 56 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop