水平線の彼方に(下)
「友達のことなんだけど…」

自分のことだと言って話すのは嫌だった。
好きでも嫌いでもないクラスメートから告られて、悩んでる友達がいるってことにした。

「告られたせいでこれまでと同じ態度が取りにくくなったって嘆いてたの。変に期待させるような事もしたくないし、何事もないみたいに接するのも難しい…って。お兄ちゃんが言ってたように、そのクラスメートも告った後の気まずさとか考えなかったのかな…?」

ジョーリの軽薄さを思い出しながら聞いた。お兄ちゃんはタバコを吸いながら、深呼吸のような深い息を吐いた。

「…そんなの考えられない位、好きだと思ったんじゃないのか?その子のことが…」

カッ…!と顔が赤くなる気がして、慌ててお兄ちゃんに背中を向けた。

「…そ、そうなのかな…」

虚どらないように気をつけても声が震える。お兄ちゃんがどんな顔してるのかも見れないまま喋った。

「だったら…これからどんな顔してればいい⁈ どんな態度でいればいい⁈ 」

一番の悩み。長い長い二学期が始まるまでに解決しておきたい。

「…いいじゃねーか。今までと同じで」
「えっ⁉︎」

スッパリ切られたように解決された。驚いて振り向く私を、お兄ちゃんが笑ってた。

「どんな顔してたって、どんな態度とったって、そいつがその子を好きになる時はなるし、嫌いになる時はなるんだから、それに振り回される必要はねーと思うな…」

当たり前すぎる回答。でも、確かにその通りだ。

「できるかな…」

呟く。自分のことじゃないという前提を忘れてた。

「できるさ。相手もきっとそれを望んでると思うぞ!」

ポンッ!と背中を叩かれた。頑張れって意味。私個人のことだと分かってやってる。

「…お兄ちゃん…ありがとう…」

彼氏や彼女…関係にばかりこだわってたけど、大事なのは気持ち。
ジョーリが私のことどんなに好きでも、自分がその気がなければ今まで通りでいるしかない。
例えばそれを続けて、ジョーリが私のことを嫌いになって離れて行ったとしても、それは仕方のないこと…。

それを寂しいって思うから、もしかして悩む…⁈

(寂しくても仕方ないじゃん。ジョーリのこと、クラスメート以外に…友達以上に…思えないんだから…)


空と海ーー

くっきり分ける水平線みたいに、自分とジョーリの関係をハッキリさせたかった。

その果てに別離があっても、混ざらないものは混ざらない…そう、判断してた…。

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