水平線の彼方に(下)
「ちょ…ちょっとルゥちゃん!」

手招き手招き。
不思議そうな顔して来た彼女の腕、巻き込んで聞いた。

「まさかと思うけど、ジョーリってずっとモテてたの⁈ 」
「はんっ…⁈ 」

今更的な顔。

「キラリは何も知らないの⁈ ジョーリは一年の時から女子の人気者だよ!テニス部だし、次期キャプテンだし、理系はトップクラスだし、モテ要素多いんだから!」
「へぇ…そうなんだ…」

唖然、びっくり、夢みたい。これまでそんな人と普通に友達やってたなんて…。

(……でも、皆、ジョーリを全く分かってない…)

テニスにしても理系の勉強にしても、人一倍、頑張ってる。だから何でもできるんだ…。

(…あの日も、確かそんな話をしてたんだ…)


思い出した終業式の日。
暑い暑い夏時間。少し涼しくなってから帰ろうって話になったーーー。



「明日からいよいよ夏休みか〜♫ 高二の夏休み。受験関係なしの夏休み。何しよっかな〜♪」

成績悪くても気にしてない。それより気になるのは、これから始まる長い休みのこと。

「ジョーリは何するの?」

机に伏せて半分居眠り。テニス部は早朝から練習があってお疲れモードだった。

「んー⁈ 俺〜?今のとこ特に予定ないなぁ…部活の県大終わるまでは、そっち優先だし…」

レギュラーに選ばれてるから大変そう。シングルもダブルスも両方出るから。

「キラリは何するんだよ。…お前、部活も何もやってないだろう?」
「私?私は多分、バイトのお呼びがかかると思うから、そっち漬けの毎日かな…」

去年の夏休みを思い出してた。朝から夕方まで、伯母さんにこき使われてた。

「バイトか…いいなぁ…それ…」

自分も部活なんかよりバイトの方が楽だと言う。

「そんな事言って、人一倍頑張ってるくせに!」

朝練始まる前から一人で走り込んでるの知ってた。仲のいい宿直のオジさんが話してた。

「負けず嫌いで勉強だって人一倍やってるし、大したもんだよ、ジョーリは!」

ホントは爪の垢を煎じて飲まなきゃならないのは私。
呑気で楽してばっかの私とは違う…そういう意味で褒めた。

「…よせよ、そう言われると照れるだろ!」

起き上がる。ははは。ホントに顔赤いや。

「ジョーリ顔赤いよ!」

指差して笑った。ジョーリが慌てて頬っぺた叩く。だから余計に赤くなる。

「やめた方がいいよ。ますます赤くなるって!」

止める私に向いて、ジョーリが真面目な顔して言った。

「キラリが頑張ってるとか言うからだろ!」
「へっ…⁈ 」

笑いが止まった。

「好きな子にそんなの言われたら照れるだろ。誰だって…」
「はっ…⁈ 」

一瞬、聞き慣れない言葉に耳を疑った。空耳かと思って、ジョーリの顔を眺めた。
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