水平線の彼方に(下)
「文化祭の実行委員はジョーリと芽里とキラリで決まりね」

あみだくじに赤丸。見事ご当選って感じだ。

「ルゥちゃん、お願い!変わって!」

カップルと一緒にやるなんてヤダ…と、とっさに思った。しかも相手はジョーリと芽里。
絶対に見せつけられる。

「ごめーん、私、体育祭のリレー係なの!変われない」

予想屋の長として適任だからと、満場一致で決められたらしい。

「そんなぁ…」

ガックリ肩落とす。自分がいくら嫌でも、拒否ることもできない。
二年生が中心になってする行事だから、子供のようにワガママも言ってられないんだ…。

渋々することになった委員。昼休み、三人で集まった。

「文化祭の出し物何にする?」

話を切り出したのは芽里。私とジョーリが二人してだんまりだったから。

「ステージに出るか校内展示にするか…だよな」
「簡単なのにしようよ。日数もあんまないし…」

三人で話したくない私は、なんとかすぐに終わらせる方向に話を持ってく。
でも、そうさせまいとするのが芽里だ。

「ステージも展示も手をかけた物にしないと見に来る人はつまんないよ」

外部に公開される文化祭は、毎年大勢のお客さんがやって来る。
その人達に満足してもらえるような物を出さなければ、やった甲斐がないと言うんだ。

(言ってることは正しいけどさぁ…)

嫌だ嫌だと思いながらこの場にいる身としては、正論にも腹が立つ。
二人が一緒にいる姿を見るのは、苦痛で仕方ない。
カンタンですぐ出来るようなことはないもんだろうかと、つい考えてしまった。

「…だったらさ、外部受けのいい模擬店なんかどう?メイド喫茶ならぬボーイ喫茶とか」

ホストとかにハマる人が多いと、この最近テレビで見たのを思い出した。

(喫茶店なら手間もあまりかからないし、ウエイターを全部男子に任せてしまえば、女子は楽チン♪)

そう考えた。

「面白そう!ねっ?ジョーリ君!」

とびっきりの笑顔見せてる。
芽里にそんな顔されたら、ダメなんて言葉、誰も言えなくなる。

「…いいんじゃない?それで…」

ほらやっぱり。ジョーリも他の男子と同じで、可愛い子には弱いんだ。

大まかなことを決めて、取りあえず解散。
こっちは二人に気を使い過ぎてグッタリしてるのに、芽里達はまだ喋ってる。
カップルなんだから、いくら喋ってたって構わないけど私は複雑…。

(あーあ…なんか完全に私と芽里が入れ替わった感じだな…)

羨ましさ半分妬み半分。
友達と彼女。どっちの方がジョーリの心を占めてるんだろう…。

(彼女に決まってるじゃん…バカな私…)

あわよくばハーフ・ハーフくらいには持ち込めるかと思ってたけど、そんな感じまるでない。
チクッと刺すような胸の痛み。その痛みを抱えたまま続けなきゃいけない実行委員。
早く終わってしまえばいいのに…と、そればかり願った。


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