水平線の彼方に(下)
クラスでの話し合いの結果、ホール係は男子で決まり。
冬の制服でウエイターを務め、希望のあるお客様とはツーショット写真も撮る。
厨房は女子が担当。果物を使ったフレッシュジュースとカップケーキをメインにして、お客様にくつろいで頂く。

「ツーショット希望が一番多い男子をスター候補に加えようよ!」

長のルゥちゃんが張り切る。
頭の中で、それはジョーリ以外いないでしょ…と答えてる自分がいて、は…とさせられた。
いつの間にか、何でもかんでも気持ちがそっちに行ってしまってる。
友達として意識せずにいればいいものを、完全に意識してしまってる。
それは勿論、本人に対しても同じことで……


ある日の放課後、一人で教室にいた。真っ直ぐ家に帰るのが嫌で居残ってたーーー。

バタバタバタ…!

ダッシュして来る足音に振り向いた。教室の戸口に走り込ん来たのはジョーリ。
お互いあ…という顔をして固まった。

「…まだいたのか」

声をかけて来たのは向こう。教室に入り、自分のロッカーからラケットを取り出してる。

「うん…早く帰っても暇だから…」

間もなく始まる中間考査の勉強なんて、わたしはやらない。
そんなのやる位くらいなら、遊んだ方がマシって人だから。

「いいな。部活をやらない奴は呑気で…」

いつものジョーリの言い方。
それに対して、カンタンに反論できたのは一学期まで。今は…

「うん、呑気なの…」

あっさり認める。これ以上の会話を続けたくないと、知らない間にブレーキかけてる状態だった。

「………」

ジョーリの顔が曇る。
さっさとラケットを掴み教室を出る間際、ボソッと言葉を吐かれた。

「バイ!」

さよならの意味。私には初めて使った。

「……」

何も言えずに見送った。
心の奥にまで、ジョーリの言葉が響いてる。

『バイ…』

友達としても別れを告げられた気分。
ハーフ・ハーフの関係は、競うまでもなく断ち切られた……。
< 43 / 56 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop