水平線の彼方に（下）

Act.11 涙のバトン

文化祭は大盛況で終わった。
特にボーイ喫茶のツーショット撮影が人気で、楽できると思ってた女子達は、予想以上の忙しさに追われた。

「結局ジョーリの一位は変わらずか…つまんないなぁ…」

予想屋の長、ルゥちゃんはガッカリ。
この夏休みに身長がまた少し高くなったジョーリは、冬服姿もサマになってて、うちの高校の女子だけでなく、外部の高校の生徒からも写真撮影が殺到したんだ。

「芽里がいなかったら、ジョーリは何人に告られてたか分かんないね…」

そう言われ、芽里が照れてる。
彼女がいると知っただけで、想いも告げずに去ってく子が多かったんだ。

（これが今までと同じ関係だったら…きっと困るくらい告られてたんだろうな…）

彼女と友達の違い。それを改めて知った所で私には関係ない。
今や私は、単なるクラスメートと同じ。親しい友人でもなければ遊び仲間でもない。
会えば挨拶をして別れるだけの関係。
そういう寂しい間柄になってた……。


十月に入り、体育祭の練習が始まった。
リレーの選手に選ばれるのは、二百メートル走のタイムが速い者。
クラスの男女別にタイムが貼り出され、上から五人が選手になる。

「キラリ、今年も選手確定だね」

貼り出された紙を見てルゥちゃんが突ついた。
勉強は苦手だけど、運動はまあまあできる。それが災いした。

（もう少し手を抜いて走れば良かった…）

声には出さないけどそう思った。
選手に選ばれると、放課後イヤと言うほど練習させられる。
しかも、男子と一緒。
去年はジョーリとも仲が良かったから楽しく練習できたけど、今年はそうもいかない。
重い気持ちのまま練習に参加しても、やる気も出ず、本気も出せず、取りあえずメニューをこなすだけ。
そんな日々が続いてた。