水平線の彼方に(下)
「今日は男女混合でリレーをやる!」
体育祭準備の前日、陸上部の先生が急に言い出した。
「学年別のクラス対抗戦にしよう。皆本番と同じくらい本気で走れよ!」
女子からスタートして男女が交互に入れ代わる。クラスの代表選手達と話し合った結果、アンカーはジョーリ。
その彼にバトンを渡すのが私に決まった。
(ヤダな…ジョーリとは気まずいままなのに…)
言葉に出さないけど本心はそう。
私からバトンを受け取るのを、ジョーリ自身も嫌がってるに違いない。
クラス別に色の違うバトンが手渡される。
私達は水色。キレイな空の色だ。
「頑張ってこう!」
「一位狙おーね!」
皆張り切ってる。その中で私一人冷めてる。バトンを渡す相手との距離を必要以上に感じてた。
「おいっ!」
声に振り返った。
ジョーリがこっちを見てる。ドキッと胸が鳴った。
「お前本気出せよ!いつもみたいに手抜いて走ったら、後から蹴るぞ!」
仲の良かった時みたいな言い方。ジョーリは私の練習ぶりをずっと見てたんだ。
「…本気で走るに決まってるでしょ!蹴られたくないもん!」
同じように言い返した。あの放課後からこっち、久しぶりに言葉を交わした。
ニヤッとジョーリが笑う。その顔に胸が熱くなった。
「位置について…!」
第一走者がスタートに並ぶ。
「よーい…」
パンッ‼︎
一斉に走り出す選手達。目指すは次の走者。確実にバトンを送り、そして、いよいよ自分の番がやって来た。
「キラリ頼むぞ!」
二番手でバトンを受け取る。目指すジョーリのいる所まで二百メートル。
グラウンド一周を走りながら、一歩ずつ近づく距離を感じてた。
私はこれまで、ジョーリが隣にいることを当たり前のように思ってた。
ふざけ合うのもじゃれ合うのも、全部が当然のように感じてた。
…でも、それが当たり前でなくなって、初めて気づいた。
これまでの事は、全て当然じゃないんだって…。
チョットした事であっという間に形が変わるくらい、不確かなものなんだって…。
芽里が現れて、私の定位置が奪われて…。
側に行きたくても行けない自分が、寂しくて…つまらなくて仕方なかった。
話をするのは友達だからってだけじゃない。
ふざけ合ってじゃれ合ってたのも仲間だからってだけじゃない。
ジョーリの横にいると、居心地良くて、楽しくて、嬉しかったから……。
私にとって、最高に居心地のいい場所だったから……。
つまりそれは……
「キラリ!」
力強く名前を呼ばれた。
パシッ‼︎
バトンと同時に気持ちを手渡した。
(…ジョーリが好きだから!)
走り去ってく背中。何故だか、涙が零れ落ちた。
確実に気持ちを手渡したはずなのに、どんどん離れてくみたいな気がして…。
何もかも全て遅いと言われてる気がしてーーー…。
体育祭準備の前日、陸上部の先生が急に言い出した。
「学年別のクラス対抗戦にしよう。皆本番と同じくらい本気で走れよ!」
女子からスタートして男女が交互に入れ代わる。クラスの代表選手達と話し合った結果、アンカーはジョーリ。
その彼にバトンを渡すのが私に決まった。
(ヤダな…ジョーリとは気まずいままなのに…)
言葉に出さないけど本心はそう。
私からバトンを受け取るのを、ジョーリ自身も嫌がってるに違いない。
クラス別に色の違うバトンが手渡される。
私達は水色。キレイな空の色だ。
「頑張ってこう!」
「一位狙おーね!」
皆張り切ってる。その中で私一人冷めてる。バトンを渡す相手との距離を必要以上に感じてた。
「おいっ!」
声に振り返った。
ジョーリがこっちを見てる。ドキッと胸が鳴った。
「お前本気出せよ!いつもみたいに手抜いて走ったら、後から蹴るぞ!」
仲の良かった時みたいな言い方。ジョーリは私の練習ぶりをずっと見てたんだ。
「…本気で走るに決まってるでしょ!蹴られたくないもん!」
同じように言い返した。あの放課後からこっち、久しぶりに言葉を交わした。
ニヤッとジョーリが笑う。その顔に胸が熱くなった。
「位置について…!」
第一走者がスタートに並ぶ。
「よーい…」
パンッ‼︎
一斉に走り出す選手達。目指すは次の走者。確実にバトンを送り、そして、いよいよ自分の番がやって来た。
「キラリ頼むぞ!」
二番手でバトンを受け取る。目指すジョーリのいる所まで二百メートル。
グラウンド一周を走りながら、一歩ずつ近づく距離を感じてた。
私はこれまで、ジョーリが隣にいることを当たり前のように思ってた。
ふざけ合うのもじゃれ合うのも、全部が当然のように感じてた。
…でも、それが当たり前でなくなって、初めて気づいた。
これまでの事は、全て当然じゃないんだって…。
チョットした事であっという間に形が変わるくらい、不確かなものなんだって…。
芽里が現れて、私の定位置が奪われて…。
側に行きたくても行けない自分が、寂しくて…つまらなくて仕方なかった。
話をするのは友達だからってだけじゃない。
ふざけ合ってじゃれ合ってたのも仲間だからってだけじゃない。
ジョーリの横にいると、居心地良くて、楽しくて、嬉しかったから……。
私にとって、最高に居心地のいい場所だったから……。
つまりそれは……
「キラリ!」
力強く名前を呼ばれた。
パシッ‼︎
バトンと同時に気持ちを手渡した。
(…ジョーリが好きだから!)
走り去ってく背中。何故だか、涙が零れ落ちた。
確実に気持ちを手渡したはずなのに、どんどん離れてくみたいな気がして…。
何もかも全て遅いと言われてる気がしてーーー…。