水平線の彼方に(下)
翌朝は雲一つない快晴に恵まれた。
大雨の後が残るグラウンドは、朝早くから整地され、滞りなく運動会は開催された。

男女別対抗リレーは、午前中が女子。午後の一番最後が男子と決まってる。
そのリレーが終わったすぐ後に、恒例の告白タイムがあるんだ。


「いよいよか〜!腕が鳴るー‼︎ 」

リレー係で予想屋の長でもあるルゥちゃんは、朝から他の予想屋達と総出で、スター候補を入れ替えてた。
整地されたとは言え、地面にはぬかるみが残り、それに足を取られて転倒する生徒が続出してたからだ。

「キラリも転ばないよう気をつけて!」

入場門に向かう私にルゥちゃんが声をかける。
それに手を上げ、集合場所にやって来た。
繰り出し係は男子。その中にジョーリがいた。

「転ぶなよ!」

私に言ってる。一昨日のことがあってから、また前みたいに接してくれるようになった。

「転ぶ要素ないからへーき!」

足だけは丈夫だからと言い返す。それを茶化された。

「すげー自信!頼もしー!」

笑ってる。人の気も知らないで。

「人のことばっか言ってないで、自分こそ転ばないようにね!」

転んだら蹴るよ!と付け足す。そんな風にじゃれ合うのもきっと今日が最後。
明日から私は、自分の気持ちを封じ込める…。

「じゃあ入場して!」

誘導係の先生が旗を振る。小走りで進み出した列に向かって、ジョーリが声をかける。

「キラリ、頑張れよ!」
「…うん!」

振り向いて手を振った。

これが最後。

この別れが最後。

親しく話をするのも、じゃれ合うのも、

きっと全部最後だと思った……。
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