水平線の彼方に(下)
騎馬戦が済んで退場門に移動してく。その後ろ姿を見てハッ!と気づいた。

「ジョーリ…足挫いてる…」

私の言葉に周りの仲間達がえっ…て顔する。

「ホント⁈ どうもなさそうだよ」
「うん、二回戦も平気で戦ってたし…」
「キラリの気のせいじゃない⁈ 」

皆が不思議がる。でも、間違いないと思った。
テントを出て男子テントに近付く。
クラスの男子達に混じって、ふざけ合ってるジョーリがいる。
一見、どこも変わりなく大丈夫そうだけど、よく見ると左足少しかばってる…。

(…こんなんでリレーなんて…出来るの…?)

「止めさせなきゃ!芽里に!」

そう思って探しだす。けど見つからない。一体、どこへ行っちゃったの⁈

モタモタしてる間に、リレーの準備が始まる。
繰り出される選手達。その中に足をかばいながら歩くジョーリがいた。

「ルゥちゃん、ジョーリを止めて!足痛めてる!」

リレー係の彼女に頼んだ。でももう遅い。第一走者がスタートラインに並ぼうとしてる。

「今更ムリだよキラリ…始まるもん…」
「えっ…だって、あの足じゃあ……」

満足に走れっこない。そう思った。

ハラハラしたまま見守る。

「位置について…!」

真剣勝負の始まり。もう誰の声も届かない…。

パンッ‼︎

ピストル音が響いて一斉にダッシュする選手達。アンカー以外は二百メートル。でも、アンカーは倍の四百メートルを走る。
あの足でジョーリが走り切れるかどうか、それが一番の問題…。

番が近づくたびにレース展開が早くなる。私達の色、水色のバトンを持った選手は僅差で二位。
そのバトンを受け取り、ジョーリが走りだした。

「ジョーリ!頑張れ!」

身を乗り出しながらルゥちゃんが叫んだ。
私は声をかけるのも忘れて、ジョーリの足元ばかりを気にしてた。


…ジョーリの足は、最初の百メートルくらいはなんとかなっても、残りがどうにもならなかった…。
痛みが走り、引きずってる。順位は下がる一方で、結局、一位にはなれなかった…。

ルゥちゃんの予想は大きく外れ、結局、スターに選ばれたのは三年生。
でも、その告白タイムで告られたのは……

「えっ…⁉︎ 」
「あれは……」

(…芽里⁈ )

ゴールライン近くに立ってる芽里に向かって近づいてく。二人の間を、生徒達が取り囲んだ。

「砂川芽里さん、ずっと好きでした!僕と付き合って下さい!」

お願い代わりのバトンを差し出す。

芽里はジョーリの彼女。誰もがそう信じてた。
だからこの告白は失敗。皆はそう思った…。

けれど…

「はい。喜んで!」

満面の笑みを浮かべて芽里がバトンを受け取る。
何が起きたのか一瞬、ワケが分からなかった…。


「…どういうこと?」

先に聞いたのはルゥちゃん。

「よく分かんない…」

答えたのは私。
某然とする中で、少しずつ大きくなる拍手。
その音を聞きながら、私は一人、足を引きずって歩くジョーリの背中を見つめてた……。

(夏休みからこっち、二人がくっついてたのは何故……どうして?)

湧き起こる疑問。
それを聞かなきゃいけないと、急いでジョーリの元へ走って行ったーーー。
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