水平線の彼方に(下)
Act.13 エピローグ
水平線の彼方に
水平線はいつも海と空を区切っている。
それは真っ直ぐなように見えて、実は綺麗な弧を描いている。
目に見えてるものだけが全てではなくて、
そこに見えないものや錯覚してるものの中に
ホントのことや未来が隠されている…。
それに気づいたのは、この人に会ってから…。
目に見えない大切な何かを、教えてもらってから…。
「…綺羅ちゃん何だって?」
「えっ⁈ 」
ドキッ!
「電話。何話したんだ?」
「えっ…うん、あの…元気かどうかって…」
「他には?」
「他に? と、特にないよ…(プロポーズのこと以外はね)」
後半言えずに押し黙る。
あの子はいつも、ドッキリするようなことを口にする。
(プ…プロポーズなんて…私達にはまだまだ早すぎる…付き合ってそんなに経ってもないのに…)
前の彼とは、五年付き合ってもされなかった経験が頭にあった。
ノハラのことは大切な人だと想っている。
だけど、あっちが私のことをどれ位本気で考えてるか分からない。
沖縄に連れて行ってくれたのだって、もしかしたら仕方なくかもしれないし、
こうして会ってるのだって、今はもう惰性かもしれない。
でも、私は日を追うごとに彼がどんどん好きになって、
苦しいほどに彼を大事だと…手放したくないと思うようになっている。
持て余す程、彼に対する気持ちは高まっていて、だから今日も部屋までついてきたのだ…。
「あのさ…」
「は…はい!」
「えっ⁈ 」
キョトン…とされた。
やばっ…緊張してるのバレた…⁈
椅子から立ち上がる。
(お願い、これ以上近寄って来ないで…!)
心臓の音が耳鳴りのように聞こえる。
さっきの綺良さんの電話で、余計に胸が大きく鳴っている。
そんな私のことを見て、彼が不思議そうに聞いてきた。
「なんでそんな顔赤くしてんだ?」
「えっ?ホント⁈ ヤダ…なんでだろ…」
自覚してるけど、わざとそう言って顔を背ける。
そうすることで、少しでも彼と対面するのを避ける。
なのに彼は、それをちゃんと分かってるみたいで…。
「花穂、こっち向け」
両手で頬を挟んで無理矢理自分の方に向ける。今の私にとって、それがどれだけ動悸を速めるかを知らないで…。
「お前、ホントに変わんねーな。いい加減慣れろよ」
「な…何が…」
ドキドキしながら発する声が震えている。
その口を塞がれた。
「…結婚…しねーか?…」
離れた唇が喋った。
「花穂とずっと一緒にいたい。一生ずっとオレの隣にいて欲しい。嫁さんに…来いよ…」
頬を包む手が震えてる。
私を見てる眼差しが揺れてる。
聞いたことのない言葉に、胸が熱くなって…苦しくて…信じたいのに、信じられなくて……
「ヤダ…」
小さく囁いた。
「えっ⁉︎」
ノハラがギョッとする。
「ヤダ……夢見てるみたい…」
ほぅ…と大きな溜め息が出る。
「…夢じゃないよね?現実よね?」
確かめる。それくらい自分に自信がなかった。
「夢でも幻でも嘘でも冗談でもない!本気で言ってる!嫁に来い‼︎ 」
命令形?どうしてよ…。
でも…
「うん…行く…」
胸に飛び込む。
全てを受け入れてくれる。
私を一番理解してくれている。必要としてくれている。
この人の…
ノハラのお嫁さんに…
なりたい……。
それは真っ直ぐなように見えて、実は綺麗な弧を描いている。
目に見えてるものだけが全てではなくて、
そこに見えないものや錯覚してるものの中に
ホントのことや未来が隠されている…。
それに気づいたのは、この人に会ってから…。
目に見えない大切な何かを、教えてもらってから…。
「…綺羅ちゃん何だって?」
「えっ⁈ 」
ドキッ!
「電話。何話したんだ?」
「えっ…うん、あの…元気かどうかって…」
「他には?」
「他に? と、特にないよ…(プロポーズのこと以外はね)」
後半言えずに押し黙る。
あの子はいつも、ドッキリするようなことを口にする。
(プ…プロポーズなんて…私達にはまだまだ早すぎる…付き合ってそんなに経ってもないのに…)
前の彼とは、五年付き合ってもされなかった経験が頭にあった。
ノハラのことは大切な人だと想っている。
だけど、あっちが私のことをどれ位本気で考えてるか分からない。
沖縄に連れて行ってくれたのだって、もしかしたら仕方なくかもしれないし、
こうして会ってるのだって、今はもう惰性かもしれない。
でも、私は日を追うごとに彼がどんどん好きになって、
苦しいほどに彼を大事だと…手放したくないと思うようになっている。
持て余す程、彼に対する気持ちは高まっていて、だから今日も部屋までついてきたのだ…。
「あのさ…」
「は…はい!」
「えっ⁈ 」
キョトン…とされた。
やばっ…緊張してるのバレた…⁈
椅子から立ち上がる。
(お願い、これ以上近寄って来ないで…!)
心臓の音が耳鳴りのように聞こえる。
さっきの綺良さんの電話で、余計に胸が大きく鳴っている。
そんな私のことを見て、彼が不思議そうに聞いてきた。
「なんでそんな顔赤くしてんだ?」
「えっ?ホント⁈ ヤダ…なんでだろ…」
自覚してるけど、わざとそう言って顔を背ける。
そうすることで、少しでも彼と対面するのを避ける。
なのに彼は、それをちゃんと分かってるみたいで…。
「花穂、こっち向け」
両手で頬を挟んで無理矢理自分の方に向ける。今の私にとって、それがどれだけ動悸を速めるかを知らないで…。
「お前、ホントに変わんねーな。いい加減慣れろよ」
「な…何が…」
ドキドキしながら発する声が震えている。
その口を塞がれた。
「…結婚…しねーか?…」
離れた唇が喋った。
「花穂とずっと一緒にいたい。一生ずっとオレの隣にいて欲しい。嫁さんに…来いよ…」
頬を包む手が震えてる。
私を見てる眼差しが揺れてる。
聞いたことのない言葉に、胸が熱くなって…苦しくて…信じたいのに、信じられなくて……
「ヤダ…」
小さく囁いた。
「えっ⁉︎」
ノハラがギョッとする。
「ヤダ……夢見てるみたい…」
ほぅ…と大きな溜め息が出る。
「…夢じゃないよね?現実よね?」
確かめる。それくらい自分に自信がなかった。
「夢でも幻でも嘘でも冗談でもない!本気で言ってる!嫁に来い‼︎ 」
命令形?どうしてよ…。
でも…
「うん…行く…」
胸に飛び込む。
全てを受け入れてくれる。
私を一番理解してくれている。必要としてくれている。
この人の…
ノハラのお嫁さんに…
なりたい……。