水平線の彼方に(下)
Act.3 彼女
お兄ちゃんの名前は石坂真悟(いしざかしんご)。初めて会ったのは、彼が大学を卒業した年の夏。
亡くなった姉と付き合い始めて三ヶ月くらい経った頃、デートの帰りに家まで来た。
「石坂さん。サーファーよ」
そう言って紹介された。
(サーファー…⁈ )
本土から来る人は、大抵海に関わる仕事に就く。でも、サーファーは職業じゃないと、その頃の私は信じてた。
黒く日焼けした肌はかっこ良くて印象的だったけど、どう見ても遊んでるようにしか思えない。
「お姉ちゃん、あの人と付き合うのやめた方がいいよ!遊んで捨てられるよ!」
真顔で話す子供の言葉を聞き、姉はクスクスと笑った。
「そんな事ないわよ」
面白いこと言うわねといった感じ。真剣に取り合ってもらえない。
「だってどう見ても遊び人じゃん!本土の人はこの地に根付かないって皆言うし…!」
皆というのは小学生同士の会話でのこと。
「シンゴはそんな遊び人なんかじゃないわよ。キラの考え過ぎ」
確かにまだプロにはなっていないけど、確かになれる人だと姉は語った。
「私は彼を信じてる」
恋する女は盲目。
この間、ドラマの中で女優が言ってた通りだ。
(絶対捨てられるって…!)
確信めいた言葉を呑み込んだ。
夢中になってる姉には、何を言っても無駄だと思った…。
(あの頃は…ホントに子供だったな…)
恋愛も含め、何もかも知らない事だらけだった。
「シンゴといると息詰まっちゃう…」
友達に話してた姉の言葉を聞いたことがある。
お兄ちゃんと姉の間で繰り返されてたケンカ。
(でも、私の前ではそんな所、見せたこともなかったね…)
プライドの高い姉。
子供の私を心配させないようにしてたのかもしれない。
だけど私はいつも気がかりだった。
お姉ちゃんがフラれないように…。
共に歩く未来が、お兄ちゃんと一緒であるように…と、祈ってばかりいた。
亡くなった姉と付き合い始めて三ヶ月くらい経った頃、デートの帰りに家まで来た。
「石坂さん。サーファーよ」
そう言って紹介された。
(サーファー…⁈ )
本土から来る人は、大抵海に関わる仕事に就く。でも、サーファーは職業じゃないと、その頃の私は信じてた。
黒く日焼けした肌はかっこ良くて印象的だったけど、どう見ても遊んでるようにしか思えない。
「お姉ちゃん、あの人と付き合うのやめた方がいいよ!遊んで捨てられるよ!」
真顔で話す子供の言葉を聞き、姉はクスクスと笑った。
「そんな事ないわよ」
面白いこと言うわねといった感じ。真剣に取り合ってもらえない。
「だってどう見ても遊び人じゃん!本土の人はこの地に根付かないって皆言うし…!」
皆というのは小学生同士の会話でのこと。
「シンゴはそんな遊び人なんかじゃないわよ。キラの考え過ぎ」
確かにまだプロにはなっていないけど、確かになれる人だと姉は語った。
「私は彼を信じてる」
恋する女は盲目。
この間、ドラマの中で女優が言ってた通りだ。
(絶対捨てられるって…!)
確信めいた言葉を呑み込んだ。
夢中になってる姉には、何を言っても無駄だと思った…。
(あの頃は…ホントに子供だったな…)
恋愛も含め、何もかも知らない事だらけだった。
「シンゴといると息詰まっちゃう…」
友達に話してた姉の言葉を聞いたことがある。
お兄ちゃんと姉の間で繰り返されてたケンカ。
(でも、私の前ではそんな所、見せたこともなかったね…)
プライドの高い姉。
子供の私を心配させないようにしてたのかもしれない。
だけど私はいつも気がかりだった。
お姉ちゃんがフラれないように…。
共に歩く未来が、お兄ちゃんと一緒であるように…と、祈ってばかりいた。