水平線の彼方に(下)
お兄ちゃんと後ろに乗り込む。エヘヘ。嬉し〜な ♪
初恋の人と同じ席。いろいろと喋らないと損な気がする。

「綺良ちゃん高校生活どう?」

話しかけてきたのはお兄ちゃんの方。

「楽しいよ!勉強はニガテだけど」
「もう二年生だよね。彼氏はいる?」
「いなーい。私、お姉ちゃんみたいにモテないもん」

可愛くてモテモテだった姉を思い出す。その姉と付き合ってたお兄ちゃん。私を見て不思議そうだった。

「ふ〜ん、なんでだろう…可愛いのに…」

照れるようなことを言う。そしたらまたもや伯母さんが口出した。

「ガサツだからに決まってるでしょ!キラは強気で生意気だもん!」

楽しそうに笑う。それでつい声を上げた。

「余計なこと言わないで!おばちゃん!」

確かに性格といい行動といい、私の方がお姉ちゃんよりも元気だけど、ガサツと言う程ではない。
横にいるお兄ちゃんが笑いを噛み締める。それが何だか無性に悔しかった。

学校の話や友達の話を、お兄ちゃんはニコニコして聞いてくれた。
姉が生きてた頃は、一緒に話すこともしなかったのに、まるで自分が姉になったかの如く喋り易い。
今になってこんな風に話せることが、不思議でならなかった…。

(私がお姉ちゃんの妹だから、調子合わせてくれてるのかな…)

なんとなくそんな気持ちもあった。姉がいなかったら私なんて、きっと彼の目にも止まらない。

(だったらこの人は、なんで目に止まった…?)

助手席で伯母さんと話をする女性を見た。
大して美人でもなければカッコ良くもない。
平凡でどこにでも居そうな人なのに、どうしてお兄ちゃんはこの人と付き合うことにしたんだろう…。
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