透明な君へ

――コンコン


リズミカルに2回叩かれたドアをギロリと睨む。すると返事をするよりも先に、看護師のきびきびとした声が聞こえてきた。


『先生。佐伯さんが来ました』

えっ、もうそんな時間?と時計に目をやると、診察時間の1時半をちょうど迎えたところだった。

慌てて椅子から立ち上がるとドアの真正面に立ち、今までのイライラを全部引っ込めて精一杯の笑顔を作り上げた。


その笑顔を崩さないよう細心の注意を払いながら、今度は精一杯の穏やかな声を出す。



「佐伯さん、どうぞ」



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