透明な君へ

「おう、久しぶり」

「そんなに久しぶりじゃないっすよ!」

「そうだっけ?」

「こないだ先輩んち行ったでしょ。先輩どんだけ俺に会いたいんすか!」


そう言ってコロコロと笑う崇の右隣には、僕の見た事のない男が1人座っている。

ぺこりと会釈をしてきたその男に僕も軽く頭を下げ、崇の左隣に座った。




あれから夢を見るのも忘れて眠り続け、目が覚めた時には、今度は夕日が眠りにつこうとしているところだった。


特に準備する事もない僕は、適当に着替えをして、財布と携帯だけを持って家を出た。



寝坊した割に何とか時間に間に合ったのは、指定された店が僕らの行きつけの店だったからだろう。


どこかアジアン風な雰囲気が漂い、個室と個室の間は淡いピンク色のカーテンで仕切られている。

楕円刑の木製テーブルを挟んで設置されている椅子はソファーのようにふかふかで、親切な事にクッションが2個転がされている。


どちらかというと女の子のほうが好きそうな店なのだが、残念な事に僕達が来る時はいつも男だらけで、女っ気のかけらも無い。

それが今日は女の子と一緒に飲めるというのだから、崇がいつも以上ににこにこしているのも何となく分からないでもないか。



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