透明な君へ
真っ白な壁。
真四角の部屋。
その真四角の中央には、これまた真っ白なソファーがテーブルを挟んで2つ置かれている。
真っ白な壁にぽっかりと開けられた真四角の窓からは、今は綺麗な水色が覗いている。
数時間後にはそれがオレンジ色になり、更に黒へと変化していくだろう。
カウンセリング部屋なんてこういうものだ。余計な物は一切置かない。
僕は部屋の片隅にひっそり構えているデスクに座り、脚を組んだ。もう何度も何度も読み返し、見なくても読み上げられる程になったカルテを手に取ると、またしてもイライラが込み上げてくる。
今日は大切な日だというのに。
初めて受け持つ患者の、初診察の日だというのに。
このイライラの原因は分かってる。
分かっているのに治まらないから余計腹が立つ。そんな自分が子供みたいで……。
僕は聞いてしまったんだ。さっき、忘れ物を取りに医局へ戻った時に他の医師達が話しているのを。