小悪魔的な彼と悲観的な彼女
「…で、今日は一体どんなご用が?」
注文後、すぐに届いたビールに口をつけながらも、琴乃の視線は興味やら敵意やら警戒やらを思う存分含ませて拓也君の方へと向けられ続ける。
…でも、あぁ、視線が痛い… なんて感じてるのはどうやら私だけのようで、本人は至ってそのまま相も変わらず通常運転。
「いえ…用というか、ただ琴乃さんとお会いしたいなと思いまして」
そして変わらず綺麗な微笑みは、彼のお顔でご健在である。
「そう。それで?その琴乃さんとお会いした感想は?」
「とても素敵な方だと思いました」
「わぁ、素敵なお世辞をありがとう」
それに比べて…琴乃さん、笑えてない、笑えてないよ。それは褒められた方のする顔じゃ無い。
「お世辞だなんてそんな事。本心なのに」
「そんな胡散臭い顔してる人に言われても信じられませんね」
「胡散臭い?そうですか?」
「先程からあまりにも綺麗な笑顔を振りまかれているのでね、作り笑いも程々にしろと思っております」
「いやぁ、僕自身作ってる意識は無いんですけど…あぁそっか。だからすみれさんにも信用して貰えないのかな」