小悪魔的な彼と悲観的な彼女
「ねぇ、僕の名前呼んで」
これだ。この彼の表情に、視線に、私はいつも負けてしまうんだ。…不敵に、イヤらしく、意地悪なーー
ーーだから目を合わせちゃいけないって、ちゃんと分かってたはずなのに。
「……た…くや、くん」
「もう一回」
ニヤリと笑う彼はきっと、私が自分の思い通りに動いて喜んでるんだ。そうに違いない、そうだって分かってる。
…それなのに、
「…拓也君…」
私の口は動いてしまい、その名前を声に乗せる。
彼は拓也君。5歳年下の、私の彼氏。
「良く出来ました」
それはまるで、ご褒美だと言わんばかりに。
私にキスをした彼は、とても満足げに微笑んでいて、またもや私はそんな彼にやられてしまうのである。
拓也君は、どこまでも小悪魔的。
可愛くて憎たらしくて、愛おしい。
ーー君の名前は、終