小悪魔的な彼と悲観的な彼女
琴乃が言うあの日ーーそれはちょうど一ヶ月前の私の誕生日であり、私が初めて彼と出会った日でもある。
彼に出会ったあの時の私は酔っ払ってた訳だけど、それは一体何故なのか。…その答えは、今と全く同じ場所で同じ様に同じ彼女に付き合ってもらったその帰り道だったから、そういう事なのだ。
一人寂しくいつものように残業を終えて、ただ虚しい疲れと共に過ぎ行く20代最後の誕生日を迎える私を不憫に思った琴乃が、仕事上がりから終電までを一緒に過ごしてくれたという話。本当に、私は素敵な同期に恵まれたなぁと思う。
…まぁでも、同期って言っても過去の話なんだけど。
琴乃はもう寿退社してるからね、今日だって家で旦那さんが待ってるから。それなのに旦那さんを差し置いて毎回遅くまで私が付き合わせちゃってるから。可愛い奥さんがその度深夜帰りだから。
……本当に、申し訳ない。
「えぇ⁈ だってあの時あんなに無理だって嘆いてたのに!」
「…はい」
「あたしがどんなに励まそうとしても聞く耳すら持たなかったのに!」
「…はい」