小悪魔的な彼と悲観的な彼女
でも、反省して落ち込む私を見てかどうかは分からないけど、一応仕方ないなぁって感じで笑ってくれたから…うん。怒ってる訳では無いみたい、良かった…
「つまりさ、またなんか悪い事考えてたんでしょ?」
「…え?」
「悪い方に考え始めると止まんないからね、すみれさんは。きっとそうなんだろうなぁと思ったんだけど、違う?」
…なんて、微笑みながら、真っ直ぐ私を見つめた拓也君が急にそんな事を言うもんだから…
「い、いや別に、悪い事なんて…」
まさかそんな、まるで覗かれてんじゃないかってくらい心の中を当ててくるからさ、だからつい、なんかもうバレてるのは分かってても悔しくて、それでいてすごく申し訳ない気持ちにもなって、だからこそなんか変な感じ丸出しで否定しちゃったりなんかして、だけど…なのに、それなのに。
「行こうね、ご飯。僕は楽しみだな」
そう言うと彼は、その手でそっと私の手を取って…その瞬間、彼の手の温かさが私の手にじんわりと伝わってくる。
「本当はずっとすみれさんとどこかに行ってみたかったんだ。だからきっかけが出来て嬉しいし、すみれさんが喜んでくれてたら僕はもっと嬉しいよ」
そんな事を、手を握ったまま彼は優しい声色で紡ぐ。そしてそれが私に伝わった事が、完全に私の思考が向きを変えた事が分かったのか、彼は笑顔で私の手を引いて歩き出して…
…そう。それはまるで、悪い方へ行こうとする私を引き戻してくれたかのように、そんな風に私には思えて。