小悪魔的な彼と悲観的な彼女


私と拓也君がやって来たのは、落ち着いた雰囲気の和食屋さん。

ついに、ついに二人だけで初めての外食である。


「ごめんねすみれさん、遅くなっちゃって」

「全然っ!お仕事お疲れ様でした」


いつもは私の職場から近い例の居酒屋に集まっていたので、じゃあ今日は拓也君の近い方で!と、これまた初の拓也君の職場方面集合。

私の方が休みだったから終わり時間に合わせられるっていうのと、あとは拓也君の事を少しでも知りたいって、近づきたいっていうあの日の気持ちから私が提案したんだけど…


「なんかここ、すごく落ち着いてるよね。上品っていうか…」


部屋に通されて、どうやら順番に出て来るらしい料理を待ちながら…思わず呟いてしまった。なんだかここは和食屋さん…というより料亭?って呼んでいいのか分かんないけど、なんかそんな感じの所。

私がそっちに行くって言ったらじゃあ店は探しとくねって、それで拓也君が予約してくれたのがこんなにすごいお店のちゃんとした個室で…


「うん。この前すみれさんが若い子が好きじゃないって言ってたから」

「…なんか、こちらこそ気を使わせちゃったみたいで…ごめんなさい」

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