小悪魔的な彼と悲観的な彼女
「そっか、じゃあ出たら教えてね」
ーーそう、何も知らずにニッコリ微笑む拓也君に、ズキリと私の良心が痛む。
分かったって頷きながらも本当はもう出てるシフトの存在を…私は無い物にした。
だって、嫌なんだ。
もう一緒に出掛けたくなんて無い。
…微笑みを崩さないように細心の注意を払いながら、私は決意していた。もう二人で出掛けるのはやめようと。
ーー昨日の記憶の中で一番心に残っているのは、“接待かと思った”の一言だった。
ショックだったんだと気づいたのは、お酒を飲みながら必死に忘れようとする自分を知った時。だから衝撃で抜け殻みたいになったんだなって、だから考えたくなくなったんだなって、それがその時やっと分かった。
だからそんな風に外から見えるんだって、そう思ったらもうなんか…最近見えなくなっていた現実がハッキリとした輪郭を現した、そんな感じで。
私より拓也君は5歳も若い。
私と拓也君は全然タイプの違う人間。
私と拓也君が付き合うなんて現実的に可笑しい、出会いから何から全て違和感しかない。