小悪魔的な彼と悲観的な彼女
「あ…どうぞ」
でも、いつもいつも一人でどんよりと飲んでいたからだろうか。こんな風に声をかけられる事なんて…というかむしろ私の隣に人が座る事なんて、そうそうある事では無かった。…そりゃあそうか。一人でブツブツ言いながらどんより飲んで、どう見たって私は危ない奴だ。
…だから、
「大丈夫ですか?」
なんて声かけられたのも、ここに来るようになってから初めてで、
「今日はいつにも増して辛そうだから、思い切って声をかけてみました」
「…いつにも、増して?」
「はい。いつにも増して」
“最近よくここで飲んでますよね?”
…そうやって、私を見ていた人が居たのを知ったのも、初めてで。
どうやら彼は、ずっと私に気づいていたらしい。
「よかったら話してみませんか?俺でよければ」
そう言って、その男性はもう一度微笑みを浮かべた。それはまるで安心感…というか、安定感のある…なんだか頼りにしたくなる、そんな笑顔。
「…お幾つですか?」