小悪魔的な彼と悲観的な彼女


ーー彼の心が分からなくて嫌になって、もう遊びには付き合ってられないと思った時。

私の気持ちに安心すると言った彼。私を抱きしめて私が愛おしいんだと、そして私には自分が必要なのだと告げる彼に、私は自分の心の蓋を開いてしまった。彼を求めてやまない自分を知ってしまって…それからどんどん、私達の距離は近づいていって。

ちょうどその頃だろうと思う。なんでそんなに想ってくれるのか不思議に思って聞いてみたら、運命だなんて、彼に言われた事がある。

そんな現実味なんてまるっきり無い言葉に、私は今まで近くに感じていた距離に違和感を持った。求めていたのはそんな言葉じゃない、彼の想いに対する事実を知りたかったのに、誤魔化すようなそんな言葉は彼にとっての私との距離を表しているかのように感じた。自分の感覚が信じられなくなった。

…だけど、そんな私を彼は抱き寄せて、その距離が無くなった腕の中で私の心は結局彼に寄り添って…結局また、一番近くに感じている私が居て。

こんなに簡単に近づく、私の彼との距離。そこで私は気がついたんだ、距離なんて始めから無かったんだって。だって私は彼の物。私達の距離は、私の事は彼が決めるものーー


ーーあぁ、そうだ。私は彼の物だった。私達の関係は始めからそうだった。それ以上でもそれ以下でも無い。

だから私から別れを口にする事なんて、それこそ意味の無い事だ。だって私達の距離は彼が決める。だとすれば関係だって、結局は彼の思い通りになるだけだ。

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