小悪魔的な彼と悲観的な彼女


「あの…拓也君」


お店を出てすぐ私の手を掴んだ拓也君は、そのまま無言で私達のマンションの方へと向かって歩き始める。

…私の手を引く、力が強い。


「拓也君?」

「……」


声を掛けても返事が無い。振り返りもしない。なんだか強引にどんどん進んでいく彼は…絶対に、怒ってる。


「拓也君、その…話が、」

「聞きたくない」


ピシャリと、強く言い渡された。

そして前を向いたままそれ以上私に構う事も無く、改めて足を止める様子も無い。

話の場を設けるつもりは無い、そんな感じで……仕方ないか、怒ってるんだもんね。

…でも、言葉は返ってきたんだ。答えをくれる気はあるはずだし、言葉が届いてはいるって思っていい…はず。


うん、頑張らないと。

ちゃんとしないと。

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