小悪魔的な彼と悲観的な彼女
怒ってるって、思った。
どんどん先に行く彼の背中に、力の強さに、怒ってるんだって感じた。
でも、今溢れるように飛び出した声は、まるで切羽詰まっているような、そんな風にも思えるもの。
そんな拓也君の見せたそれらに、らしく無いと、私は感じて。
「…なんで?」
…それでも掴まれた手は、固く握られたまま。
「どうして?」
私に背を向けるのは…きっと表情から悟られないようにするため。私に悟らせたくないんだと思う。
「どうして隠すの?」
きっと止まらないんだ、溢れ出してやまなくて、必死に今止めようとしてる。らしく無いのは、きっとそれ。彼は今、抱いてる感情に飲み込まれそうになっていて、それに必死に耐えている。
そんな彼はきっと、きっとーー…
「…怖いの?」
「っ、」
辿り着いた答えを口にしたら、拓也君の背中が小さく動いた。
…私はこの答えで間違ってはいないのだと、確信を持った。