小悪魔的な彼と悲観的な彼女


いつもとは違う彼。

感情を制御出来なくなっている彼。


今この時が、もしかしたら本当の拓也君の気持ちを知るチャンスなのかもしれない。

そしたらきっと、もしかしたら…

…なんて、そんな事を思うのは不謹慎だろうか。何かに怯えているのだとしたら心配してあげるのが正しいはずなのに、いつもと違うって事はそれだけ追い込まれてるって事なのに、それなのにこんなのって、チャンスだなんて思う私は今、私の事しか考えてなくて…あぁでも、やっぱりまた希望が見えたような、そんな気がしてしまって。


「怖いよ」

「…え?」


…また、例のように自分の思考の渦に飲み込まれていっていた私に一言、拓也君から返事があった。それに私は意識を引っ張られる。


「怖いんだ、すみれさんの言う通り。僕は今怖い」


それは私の導き出した答えを肯定するもの。間違っていないんだって、それを認めた言葉なはずなのに…私はそれを否定されたような、そんな気持ちになる。

だって拓也君が振り返った。そしたら目が合ったんだ。


「でもさ…何にか分かる?」


そして視線の先で、拓也君は言う。

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