小悪魔的な彼と悲観的な彼女
「何が怖いのか、すみれさんには分かるの?」
私を突き刺すような視線を向けて、拓也君は私に言う。
「分かんないよね。すみれさんには分からない」
それは嘲笑うかのような、慰めるかのような、見切りをつけるかのような、悲観に暮れているかのような…
「どうせすみれさんには分からないよ、僕の気持ちなんて」
そんな複雑な表情に薄っすらと微笑みを浮かべながら、拓也君は言った。どうせ私には分からない、なんて。そんな私を付き跳ねる言葉を。
…どうせ、分からない。
「…分からないよ。でも、だから聞いてるんだよ」
「分からないのに聞いて、どうするの?」
「知りたいんだよ、拓也君の事。ずっとそうだよ。私はずっと…そうだったよ」
「…そう、だった?」
すると、囁くように零した拓也君が、眉を顰める。
その視線が、じわりと色づき始める。