小悪魔的な彼と悲観的な彼女
ーーどうせ私には分からない。信じてくれない。
そんな事…言われたって、
「無理に決まってる…いつも誤魔化して隠してきたのは君なのに、それなのに信じて欲しいなんて、分かって欲しいなんて、 そんなの…無理だよ」
君は今、どうせ、なんていう拗ねた言い方で、傷ついて、悲しんで、私に求めているものを訴える。
嘘を吐いていたのは、吐き続けていたのは君なのに。それなのに私の信頼を求めて、私の心を求めている。
…ズルい。可笑しい。酷い。そんな批難する気持ちが私の中に、当然のごとく生まれてきた。そう。生まれてきた…はずのに…なんでだろう。確かに感じるそれらとは正反対に、そんな君に私は今…どこか愛おしさを、感じてもいて。
きっとどこまでも、どこまでも私はバカなんだ。きっと君が本心を見せてくれて私を求めてくれてるって…そんな錯覚に、陥っているんだ。
そう、錯覚。だってそんな事ないんだから。拓也君にはもっと大切な人がいる。私は沢山の中の一人。そんな現実を前にそんな言葉、信用なんて出来ない。出来る訳ない。してはいけない。だから…
「無理だよ、無理なの」
あぁ、ごめんね。ごめん。君の求めるものに私はもう、答えられないんだよ。答えては、いけないんだ。