小悪魔的な彼と悲観的な彼女
それは本当にいつの間にか、だった。いつの間にか始まった彼のアポなし訪問が、いつの間にか回数を増やしていって、ついには毎度の事になってきている…そういう事なのだ。
あぁもう、本当にやめてって言ってるのに。一言でいいから連絡してって言ってるのに。それなのに彼は毎度変わらず深夜、私が寝静まった頃にコッソリとやって来る。
そんなのは絶対おかしいと思うんだ。一歩間違えたら泥棒の括りになる、というか私の方が泥棒が隣で寝てても分からなくなってしまうかもしれない…なんて言ったら、彼は“大丈夫だよ、そしたら泥棒が寝れないように僕が毎日一緒に寝てあげるから”なんて、甘いセリフに見せかけたやめる気は無い宣言をしてきた。
これじゃあせっかくのオートロック付きマンションでも何の意味もない。合鍵を持たれてしまった上に本人が直す気ゼロの状況じゃあ打つ術なしだ。
「はぁ…やれやれ」
「…うーん…」
ごろりと、隣の彼が寝返りをうつ。
するとこちら側に向いた彼が腕を伸ばしてきた。どうやら私を探しているような雰囲気のその手にそっと身を委ねてみると、彼はやっと見つけたと言わんばかりに私の身体を自分の方へと引き寄せて、そのまま暖をとるように擦り寄ってくる…
…うん、可愛い。正直とてつもなくキュンとする。
……だけど、でも。
そんな彼に囚われてしまった私を誰か助けて下さいと、本当は心から切実に思っている。