小悪魔的な彼と悲観的な彼女
慌てて部屋の中に戻ると、やっぱりニコニコした彼と再会。これも見間違いじゃなかったか!
「なんでって、いつも通り来ただけだよ?そしたらすみれさん居ないから」
「いやいやっ、そんな当然みたいな顔されても!居なかったら普通帰るでしょ!」
「やだなぁ、こんな時のために合鍵があるんだよ」
「絶対違うしそんなつもりで渡してない!」
「?、そうなんだ?まぁそれよりさ、いつまでもそんなとこ居ないでお風呂でも入って来なよ。ちゃんとお湯も溜まってるからさ」
「…あのねぇ…」
見事なまでに華麗なるスルー。手馴れている。彼は本当にこのスルー技術に長けている…ていうかさ、お湯も溜まってるって言ったって、どうせ勝手に入ったからそれでってだけなクセに。
私のために入れて待ってたみたいな言い方したってそうはいかないんだから。今日の私はいつもより手強いんだからね、ふん!
「…うん。まぁそんな目で見ないでよ、すみれさんの事ずっと待ってたんだよ?」
「……」
「こんな遅くまで帰って来ないんだもん、心配で電話したんだけど気づかなかった?」
「…え?」