小悪魔的な彼と悲観的な彼女
好きになってしまった私、言葉を求めてしまう私が最低限の傷でその時を迎えるためにはきっとこれしかない。
それが、長く続けば続くほど深くなるだろう傷を少しでも浅くするためにも、その時が思いもよらないタイミングだろうとちゃんと受け止めて受け入れられるようにするためにも、一番大事な事。
だってきっと、自分のタイミングを決めて自分でしっかり区切りをつけて、その時を迎える前に彼を自分から切り離す。そんな事、私が出来る訳なんて無いんだから。
彼を好きになってしまった以上、最後に自分が傷つく事になるのは目に見えているんだから。
「…えーと、拓也君?…とりあえず、座ろうか」
「……」
「何か飲む?よかったら私、用意するよ?」
「…それくらい僕にやらせてよ、ここは僕の家なんだから」
「あっ、そうだよね、ごめん。私なんかが勝手にしたら悪いよね」
「いや、そうじゃなくてさ。そうじゃなくて…あーもういいからっ、いいからすみれさんは大人しくしてて」
「……」
…一応、気を使ったつもりだったのになぁ。
なんだか余計に怒らせてしまったみたいで、キッチンに向かう後ろ姿からでもそれがビシビシ伝わってくる。