小悪魔的な彼と悲観的な彼女
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“今日の夜、行ってもいい?”
拓也君から連絡が来るようになったのは…多分、この間の初めて家に行った頃からだと思う。
それまではいつもいつも気が向くままにとでも言うように、私の都合なんてこれっぽっちも考えないで深夜の訪問を続けていた拓也君。それが今ではすっかりきっちり連絡を怠らない、しっかり約束を守る子になっている。
…なんでだろう。どうして急に…というか一体、拓也君に何があったんだろう。
確かにあの日の拓也君には、様子が可笑しい瞬間があった。それこそ目の前の彼に向かって、誰?何て事を思ってしまうくらいに大きな違和感が…でも、それだって結局は本当に少しの間。すぐに元のいつも通りの彼に戻った拓也君は、今日も変わらずいつも通りな彼なのである。
いつも通りのーー私の知ってる、私が信じたいと思った彼。
…本当に、あの時のは何だったんだろう。見間違い…だったのかなぁ。
「すみれさんは、明日休み?」
「ううん、仕事だよ」
「そっか。じゃあ今日は早めに帰ろうかな、疲れちゃうと悪いから」
「え?」
「ん?」
「あ、いや、泊まってくもんだとばっかり思ってたから」
「はは。まぁそうは言ってもすぐ上だし、ここに居ても戻ってもあんまり変わらないよね」