小悪魔的な彼と悲観的な彼女


思うに、今までは私生活のにおいがこれっぽっちもしなかった。それがあの日を境にたまに、本当にたまになんだけどこんな事がチラリとあったりして…あの日の前までは電話だって鳴った事無かったし、自分家に帰った後の事とか…っていうか言うならさ、泊まらなかった時も今まで無かったのに……って、あぁそっか。そうだった。

泊まらないくらい早い時間に会った事が無かった。だからか、だから泊まっていかない日が無かったのか。…って、じゃあ最近たまにある今日みたいに一緒に居る時掛かってくる電話って?いつもは深夜な訳だし、そんな時にこんなにも狙ったように掛けてくるってつまり…あぁ、もう確定だ。やっぱり他に女の人いるんじゃん…って、まぁね、そりゃあ分かってたけどさ。


「じゃあすみれさん、そろそろ行くよ」

「え?…あ、」


“もう帰るの?”


…なんて思わず続けようとして、慌てて口を閉じた。


いくらなんでもそんな事を言う訳にはいかない。それこそ決めたルールに反する、求め過ぎた言葉だ。

うん、そうだった。帰るって話になってて、電話もきたんだし拓也君は早く戻りたいはずだ。うんうん、それに毎回泊まってく秘密が解けた所だしね、いつも遅くに会ってたから忘れてたけど普通だったらもう時間的にいい時間なはず。泊まらないで帰るにはちょうどいい時間なはず。そうそう、そういえばこの時間はお肌のためにも寝るのにもってこいな時間…あれ?もっと早い方がいいんだっけ?そういえば最近美容の勉強なんてこれっぽっちもしてないなぁ。関心すら遠のいてた、ダメだなぁ…

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