小悪魔的な彼と悲観的な彼女


それは拓也君のいつも通り。

拓也君はいつも微笑んでくれる。大体の事は笑顔で受け応えしてくれる。


それなのにいつもと違う。いつも通り笑ってるはずなのに、何故か違和感がある。そこで思い出すのは…あの時の事。


「今日も変わらず僕はすみれさんの事が好きな僕ですよ。何も変わらない」

「……」

「じゃあそろそろ、行くね。またね、おやすみ」


そう言って私のおでこにそっとキスを残して、もう一度笑顔を見せた拓也君は自分の家へと帰っていく。そんな彼が最後に見せた可愛い笑顔を見ても…私の中の違和感は、拭い去れないままだった。


なんだ、いつも通りだ。何も違ってなんてないーーそう、最後の笑顔を見た後、前までの私なら思っていたはず。

だって可愛い笑顔こそ拓也君だ。そして意地悪に笑うのも拓也君だ。それで私の事を好きだって言ってくれる、私の欲しい言葉をくれるのもーー…

…それなのに。


違和感


いつの間にか、つきまとうそれは違和感。あの時の拓也君が、私の記憶の中から顔を出す。

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