小悪魔的な彼と悲観的な彼女
よかった、なんて。少し弾んでしまう私はやっぱり…拓也君の事、好きなんだよなぁ。
「…ねぇ、すみれさん」
「ん?何?」
あ、なんか飲みたいのかな…って、飲みたいよね、お風呂上がりだもん。何飲むかなぁ。やっぱりビール?でももう遅いし…とりあえず聞いてみて、
「すみれさんはさ、僕の事好きだよね」
「うん…へ?」
あれ、好き…って、あれ⁈
なんで急にそんな事⁈ ってそういえばさっきそんな事を私っ、まさかさっきの、さっきのヤツ、声に出てた…っ⁈
思わず慌てて拓也君の方を見た。だってきっと聞こえてたんだ、そうだとしたらまたニヤリ顏の意地悪顏で笑ってるはず…!
…と思ったんだけど、そこにあったのは私の思いとは全く違うものだった。まさかの彼の、予想だにしない、するはずもない表情。
「…好きだもんね、僕の事」
それはまるで、念を押すかのように。もう一度それを告げた彼は、真剣な表情、真っ直ぐな眼差しを、私に向ける。
…視線に、囚われる。
そこに満ちているのは、私の中に緊張感を生み出す程の、いつもとは異なる強い何か。