小悪魔的な彼と悲観的な彼女


「…でも何度も言ってたよね、僕はすみれさんが好きだって」

「言ってくれてたけど…なんか違う感じがしてたから…」

「違う?違うって?」

「…なんか、何ていうか、本心じゃないって言うか」

「でたよそれ」

「い、いやっ、でも本当は本当に信じたいっていうか、信じるつもりではあったというか、」

「で、今日は信じてくれたんだ?」

「だから信じてるつもりで…って、ん?信じてくれた?」

「そう。今までは信じてくれなかったのに、今日は信じてくれたんだね」


ーーするとその時、彼の表情がスーッと変わり始める。その瞬間を何故かいつも、私は絶対に見逃さない。


「不思議だね。どんな僕でも僕なのに」


そう言って私を見つめるのはもう、いつもの彼だった。いつもの彼の表情がそこにはあった。


これってつまり…


…つまりそれって。


「…だ、騙したの…?」

< 60 / 202 >

この作品をシェア

pagetop