小悪魔的な彼と悲観的な彼女
「分かってるよ。僕は僕を必要としてくれるあなたがすごく好きだよ」
必要と、している。
「求めてくれる、あなたが愛おしいんだよ」
求めて…いる。
私が、君を。
それを君は知っている。
「無駄だよ。どんなに隠そうとしたって、抑えようとしたって無理なんだよ、すみれさんには。だってすみれさんには必要でしょ?ーー僕の存在が」
“だからもう、素直になろう?”
ーーあぁ、蓋が開いてしまった。
彼の笑顔はもう、もう一つの優しい笑顔なはずなのに。優しい笑顔で諭すように私を宥める彼なのに、それなのにまるで…まるで無理矢理そこをこじ開けられたような、そんな感覚だった。
開いてしまったらもう、元には戻らないのに。知らない振りなんて、もう出来ないのに。
私は本当はーー彼の全てを、求めてやまないのに。
「…残酷だね、君は」
蓋のなくなったそこから溢れ出す感情を抱きしめながら、そう呟く他、私には無かった。