小悪魔的な彼と悲観的な彼女

「ねぇ、すみれさんって抜けてるしズレてると思うけど、決してバカでは無いよね」

「へ？あ、当たり前でしょ…って、抜けてもズレても無いけどっ、」

「なら分かってるはずだよね、何度も何度もこうやって僕が同じ事を繰り返す意味」

「……」

「あれ？答えてくれないの？あぁ、言葉にして欲しいって事？」

「あっ、いや、」


…そして、しまったと思った頃には、時すでに遅し。


「僕はさ、忘れて欲しくないんだよ」


いつもの私を惑わすような甘い声が耳に入ると、それまでと変わらないはずの距離が近くなったような、グッと迫ってくるような感覚がして身体がギュッとなる。


「すみれさんが見ないフリ出来ないように、してるんだよ」

「……見ないフリって…」

「じゃないとすみれさんはきっとどこかに行っちゃうから、だからどこにも行かないように、自分の気持ちと向き合ってくれるように機会を与えてるんだよ」

「……」


……なんて目を、するんだろう。


「それで毎回実感して欲しいんだ、あぁ、僕が居なきゃダメだなって。僕の事が好きだなぁって」


微笑みながら語られる中、純粋さの中に潜むそれは、いつも私に向けられている。