小悪魔的な彼と悲観的な彼女
僕…も?
ピーンポーン
「…へ?」
「すみれさん」
ーーチャイムの後の、ガチャリの後の、聞き覚えのある声。
そして、
「来ちゃった」
なんていう、可愛らしい笑顔。
「た、拓也君っ!」
「お邪魔します」
「えっ、きっ…来ちゃったって…っ、」
「ダメだった?」
「いやっ、ダメって、だってダメなのは…」
「すみれさんでしょ?」
「へ?」
「すみれさんがダメだったんでしょ?」
「え?わ、私?」
「あぁ、間違えた。すみれさんがダメでも良かったんでしょ?」
「え⁈ そ、そんな事っ、」
「うん。ね、そんな事無かったよね。本当は寂しくて仕方なくて、すぐにでも会いたくて連絡くれたんだもんね」
「……」
サラリとケロリと、にこやかに。いつもの拓也君のペースが始まった。
…ダメだ。のまれちゃいけない。