小悪魔的な彼と悲観的な彼女


「…それは、いつから?」


初めて出会ったのは、深夜の駅からマンションへと向かう道の途中。

初めて出会ったその日から私達は付き合う事になったから、それぞれ互いにどんな背景があるかも知らない。名前すら知らなかった状態で付き合い始めた私達なのに…そんな私にどうやって、どのようにしてそんな感情を抱くようになったんだろう。

なんで私だったんだろう。

なんで私にそこまでの、特別な感情を?


「始めからだよ」


すると迷いも無く、間違いようの無い事実を述べるかのように彼は答える。


“始めからだよ”


それはつまり、出会った時からだという事。始めて出会った、初対面の時からだという事。それって俗に言う…一目惚れ?


…違う。そんな事ない。だってそんなの可笑しい。初対面の相手にそんなのなんて…さっきの言葉が軽いものでは無かった分、その分だけ現実味を帯びない。

まるでどこかのお伽話だ。

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