201号室の、オオカミくん☆
「ありがと。あ、お金」

財布から取りだそうとしたら、手で制された。



「良いって。色々口止め料だし」

にかっと笑う皇汰は、急に屈んで顔を近づけてくる。



「あのさ、若社長がお昼寝中に居なくなった」


「は?」


「若社長の事だから自力で帰れるけどさ、見つけたら一応教えて」


「分かった」

心配する素振りはないから、慣れっこなのかもしれない。デブだけど動きは素早かったしね。


「皇汰は?」


「もう食べた。教室に戻るよ」


……残念。あわよくば、一緒に食べたかった。

嫌な空気を吹き飛ばしたかったのに。



「どうした?」


背が高い皇汰は、いちいち私の顔を見ようと首を傾げてくる。


その仕草、堪らなく好き。



「ううん。私は光と外で食べるから。若社長は見つけたら教えるね」


じゃっと不自然なまま、踵を返す。
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