201号室の、オオカミくん☆


それから――……。

太陽の下、私と若社長と猫みたいな奴の昼御飯が始まった。


「まだちょっと、もくもくしてるね。桐原さん」


「……もくもくってなんだよ」

猫みたいな奴は自分の顔より遥かに大きいオニギリにかぶり付きながら、キラキラと笑う。


皇汰の世間を熟知したような計算された、少年らしくない笑顔と違い、猫みたいな奴の笑顔は真っ直ぐで純粋だ。




「うーん。混ぜすぎた絵の具みたいな?」

「疑問系にするなってば」



「あはは」


その裏のない笑顔は好きだ。




「葵(あおい)」



指についた米粒を唇で啄みながら教えてくれた。


「本家の温室に、紫の葵が咲いてる。そこからつけられた名前。けっこう気に入ってるよ」


名前、教えたくないって言ってたのに、もくもくしてる私にそう教えてくれた。


「あおい……」

口に出すと、はにかんでくれた。
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