201号室の、オオカミくん☆
あ。つい声を荒げてしまった。
クラスの皆が一斉に此方を向く。
「ちょっと、廊下に……」
皇汰の袖を引っ張りながら廊下に誘導すると、さすがの皇汰も困惑していた。
「やっぱ知ってる?」
「喋った事はある。名前も知ってる。でも他は全く知らない」
これは本当だ。まだ私は葵の事、何も知らない。
「じゃあ、なんで庇うの?」
「本当は、舞なんてやりたくないのに毎日練習してるから、その……」
あの鈴の音はなんだか悲しい音色だった。
悲しくて寂しくて、光が入る前の深海の絵みたいな。
「舞を引き受ける代わりに学校では自由にする条件らしいのに、探しに来るとかおかしいじゃん」
「いや、俺はそんな条件知らなかったけど、それまじ?」
「私は皇汰と違って嘘つかない!」